
弱い昔の基礎を補強する方法
【古い家の不安を解消】無筋基礎を、防弾チョッキの素材で補強する——アラミド繊維補強のはなし
「最近、基礎にひびが入っているのを見つけて……」 「古い家だから、大きな地震が来たら大丈夫だろうか」
現場でお話をお伺いしていると、こうしたご相談を本当によくいただきます。特に築年数の経ったお宅で気になるのが、基礎の中に鉄筋が入っていない**「無筋基礎(むきんきそ)」**の問題です。
今回は、この無筋基礎の不安を現実的な工事で解消する方法のひとつ、「アラミド繊維補強」という工法をご紹介します。
■ そもそも無筋基礎とは何なのか
「無筋基礎」というのは、その名のとおり、コンクリートの中に鉄筋が入っていない基礎のことです。
「え、家の基礎って鉄筋が入っているのが当たり前じゃないの?」と思われる方も多いかもしれません。実は、住宅の基礎に鉄筋を入れることが完全に標準化されたのは、それほど古い話ではありません。1981年(昭和56年)に新耐震基準が施行され、その後、住宅性能の基準が段階的に厳しくなっていくなかで、現在の鉄筋入りコンクリート基礎が当たり前になっていきました。
それ以前に建てられた住宅では、コンクリートだけで基礎を作っているお宅も珍しくありません。当時の常識としてはそれが普通だったので、悪い工事だったわけでも手抜きだったわけでもありません。ただ、現代の目で見ると、構造的に弱点を抱えた基礎、ということになります。
コンクリートという素材は、押される力(圧縮)にはとても強いのですが、引っ張られる力(引張)には弱い、という性質を持っています。鉄筋は、その引張力への弱さを補うために組み合わせる素材です。つまり、鉄筋が入っていないということは、「地震や地盤の動きで生じる引張力に対して、踏ん張る相棒がいない」という状態なのです。
実際、現場で無筋基礎を点検すると、すでに細かいひびが入っていることがよくあります。このまま住み続けると、地震の揺れや経年での地盤の動きによってひびがさらに広がり、最悪の場合、基礎の機能そのものが損なわれてしまう可能性もあります。
■ 防弾チョッキと同じ素材で、家を補強する
そこで活躍するのが、「アラミド繊維」を使った補強工法です。
アラミド繊維というのは、強度に優れた特殊な合成繊維で、なんと鋼鉄の約5倍の引張強度があると言われています。「防弾チョッキの素材」と聞くと、そのすごさをイメージしていただけるかもしれません。「ケブラー」という商品名でも知られている素材です。
軽くて、しなやかで、引っ張る力にとてつもなく強い。この性質が、まさに無筋基礎の弱点をちょうど補ってくれるのです。
工事の仕組みはシンプルで、シート状のアラミド繊維を、特殊な接着剤(エポキシ樹脂など)で基礎の表面に貼り付けていく、というもの。コンクリートの外側にアラミドシートが回ることで、コンクリートが引っ張られたときにアラミド繊維が代わりに踏ん張ってくれる——そんなイメージです。これで、無筋基礎が抱えていた「引張力への弱さ」を、後付けで補ってあげることができます。
■ アラミド繊維補強の、ここがいい
この工法の良さは、いくつかあります。
ひとつは、耐震性が確実に上がること。地震時にコンクリートが割れようとする動きを、アラミドが繊維方向にしっかり受け止めてくれます。
もうひとつは、ひびからの雨水侵入を防げること。シートが基礎の表面を覆うので、既存のひびが広がりにくくなり、内部への水の侵入も抑えられます。これは基礎の長寿命化にもつながります。
そして、工事が比較的短期間で済むことも大きな利点です。基礎全体を作り直すような大がかりな工事に比べると、住みながら対応できるケースも多く、ご家族の負担が小さくて済みます。
費用面でも、基礎をまるごと作り直す工事に比べれば、ずっと現実的な選択肢になります。「気にはなっていたけれど、フルリフォームまでは予算が……」という方にとっても、検討しやすい工法です。
■ 工事はどう進むのか
実際の工事は、おおまかに次のような流れで進みます。
最初は、現地調査と診断。基礎全体の状態、ひびの位置や深さ、配筋の有無などを丁寧に確認し、補強が必要な範囲と方法を見定めます。
次に、基礎表面の清掃と下地処理。アラミドシートをしっかり接着させるためには、コンクリート表面の汚れや脆くなった部分を取り除き、平滑な下地を作ることが欠かせません。地味ですが、この工程の精度が仕上がりを大きく左右します。
そして、アラミド繊維シートの貼付。専用の接着剤を塗り、シートを基礎に密着させながら貼り合わせていきます。空気が入らないように、職人が一枚一枚丁寧に施工していく場面です。
最後に、仕上げと養生。表面をきれいに整え、接着剤が完全に硬化するまでの期間、しっかり養生をとって工事完了となります。
■ 「うちはどうなんだろう」と思ったら
無筋基礎は、外から見ても判断がつきにくい部分です。「ひびが入っているけれど、これはどの程度のものなのか」「うちは古いけれど、補強が必要なレベルなのか」——こうした判断は、現場で見てみないと確かなことが言えません。
幸い、こうした構造的な不安は、今のお住まいに住みながらでも対策できる時代になっています。建て替えやフル改修を検討する前に、まずは「補強で何ができるか」を知っておくだけでも、選択肢がぐっと広がります。
少しでも気になることがあれば、まずは現状を見せていただくところから始めましょう。点検やご相談は無料で承っております。
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